できるだけ患者さん個人の病状や情報を掲載しないように考えているのですが、先日来た若者にエールの意味を込めて書かせていただきます。
20歳の男性が急性アルコール中毒で救急搬送されて来ました。 まだ陽も暮れたばかりの夕方19時前です。
幸い意識はそこそこ・・・まあ、要するに単なる酔っ払い状態でした。
しばらく寝かせておけば回復して帰宅可能と判断。
酔っ払いの多くは、自分のしていることはわかってやっています。
わかっているのに自制しない状態なのです。
ま、弱いんですね、気持ちが。
「私は酔っ払いだから許して〜」っていう甘えです。
彼も例外でなく、普通に私やナースらとふざけた会話をしながら酔っ払い状態を演じていました。
隣に別の患者さんが救急車で来たため(もちろんこっちの方が重症・・)、彼は放って置かれました。
しばらくの間、自分に注目させようと騒いでいましたが、誰も相手にしなかったためか・・・ 突然、寝返りをするふりをしてベッドの下に落ちました。
私はこの瞬間、少し切れまして・・(すみません・・)倒れた奴の胸ぐらを掴み、顔を引っぱたきながら、「おまえ、いいかげんにしろよな!どこまで他人に迷惑かけたら気がすむんや!」と怒りました。
その後、彼も私も冷静になり、彼は淡々とこうなった経緯を話し始めました。
ま、一言で言えば、大失恋して・・・誰もがそうだったように、彼も「もうこれ以上の彼女はみつからない!」と思い、もうこの世におさらばしよう・・と思い立ったそうです。
笑っちゃいけないんですが、その場にいた私もナース達も、「若いねえ・・・」とおやじとおばはんになってしまい、自分たちの過去を懐古したのでした。
取り返しの付かない別れ、新たな出会い、また別れ・・・これを経験して、人生が後戻りできないことを知り、そして2度と来ない日々を、時間を大切に生きていく。
不機嫌に生きても、笑って生きても、同じ時間しか生きられない。
泣いて生きても、楽しく生きても、同じ人生。
生きているからこその・・・喜怒哀楽。
一度の挫折で人生を捨ててしまうにはもったいない。
彼には話をする中で、さんざん、東北にボランティアに行っておいで・・と勧めたのですが・・・。
私も神戸の震災の時に救援医療隊で行きました。
そして被災地の方々に勇気づけられました。
立場が反対なんです。
みなさん、全てを失いながらも、明日に向けて今日を生きていたんです。
今の自分や世の中に疑問を持っている方、生きることの意味がわからずにいる方、自暴自虐になっているあなた。
被災地に行って見て下さい。
あなたでもできることが山ほどあります。
あなたが必要とされます。
あなたが頼りにされます。
そしてあなたも救われるはずです。
少し大人になって帰って来れますよ。
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