院長のストレス

風呂に入ってじっくり考えた。開業して以来、楽しく診療を続けているが、頭の片隅に常にプレッシャーとして残るのは、金勘定・・・・

今月は診療日が16日あるから・・週に○○万円売上れば月に××万円になる。そうすれば△△万円のローンと◎◎万円の必要経費を払って・・ああ、職員の給与を払っても少し残るなあ・・

なんて。

 

みなさん知らないでしょうけど、この十年の間に、医療機関の収支はどんどん悪くなっているのです。なぜか?厚労省が医療費を削っているからです。特に小泉改革で相当の医療費削減が盛り込まれました。さらに医療費削減のため、入院ベッドの規制も行われました。

つまり入院する人が多いから医療費がかさむ・・という理屈です。おかげで、皆さんが、「つらいから入院させてください」と頼み込んでも、「ベッドが空いていません」とか「そういう理由では入院できません」と無下に断られるのです。

 

その間にも人件費はどんどん上がっています。たとえば私が研修医の時代は、研修医のひと月の給与は10万円無かったのです。今や研修医も20万円以上の高給取り。看護師の給与も一緒です。看護師が不足している関東では、高給を出して地方から招聘しようとしますから必然的に給与が高くなります。

 

その結果、いままで公費の補助に頼っていた公的病院がまず悲鳴を上げました。まあ、公的病院の職員ってほとんどコスト意識無いですからね。そりゃ潰れるでしょ・・・

 

ここで問題なのは、日本の医療費の支払が「出来高」と呼ばれる制度ということです。使っただけ、必要になっただけ、後から支払う方法です。

たとえば、風邪で適切な診断と適切な投薬で治癒した場合と、診断に自信が無いからX線撮影、採血を行い、間違った投薬の結果、こじらせて肺炎になって、入院治療をした場合。病院が儲かるのは後者なのです。

 

当院でも、もっと採血検査したら・・とか、もっとX線撮影したら・・とかいう意見は聞きますが、そりゃ黒字になるでしょうけど・・

世の中の開業している先生の中にも、「こんなに検査したの?」って思う先生いますよね。でも、最近そんな先生方を非難する気にはなれないのです。非難すべきは医療費を削ろうとしている人たち・・・その結果が過剰診療、過剰検査、医師患者関係の悪化などに一役買っている気がしてなりません。

 

当院が突然、バカバカCTだのX線撮影だの始めたら・・・一言私に注意してください。

「先生、金儲けに走ってねえけ??」

 

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コメント: 1
  • #1

    院長 (木曜日, 10 3月 2011 20:39)

    折しもタイミング良く、「日経ヘルスケア」最新号(2011年3月号)の特集が・・・

     ●特集
     患者減少が止まらない!
     診療所に忍び寄る経営悪化

     右肩下がりで減り続ける診療所の外来患者数。長期処方の進展や景気低迷に
     伴う受診抑制で、患者の減少に拍車がかかっている。診療報酬改定も厳しい
     内容の連続で、診療所への逆風は強まるばかりだ。現場取材と独自調査で診
     療所の苦境を明らかにし、廃業や倒産に追い込まれないためのポイントをま
     とめた。

     【動向分析】
      受診抑制や長期処方が痛手
      若手もベテランも患者減

     【独自調査】
      「前年より減収」は4割に
      3割が経営行き詰まりを意識

     【対策】
      逆風を乗り切るための7ヶ条
      初期投資や固定費の抑制を

    ですって・・・胃が痛くなりそうな特集で・・・